ゴマシジミを求めて

ゴマシジミ むしたち

 これは今から30年以上前の話である。

 8月の下旬、ゴマシジミが見たくなり、山梨へと中央道を進んだ。東京は晴れていても、笹子トンネルで天気が変わることが多いので心配したが、今日は勝沼も晴れていた。天気は大丈夫だ。さて、どこに行こうかと悩んだが、確実に見られるところということで、明野を選んだ。韮崎で高速を降り、茅が岳に向かい、左に折れて、広域農道を進む。
 私は、岩手の小岩井付近のようなブルーのゴマシジミが好きだ。高校時代に標本を見て、たちまち虜になった。山梨から長野のものは、黒いものが多いが、中にはブルーのものも混じるので、楽しみである。
 今日の場所は、山が残っており、木々に囲まれた大小の草原がある。みんな、それぞれの観察ポイントを持っていると思う。車を道路の脇に止め、細い道を進んで行く。4輪駆動なら入れるがとにかく道が悪い。
 8月の蒸し暑さで、もう汗だくだ。しばらく歩いて、ポイントに着いた。ここは、伐採地だ。探し方は簡単だ。ポイントはワレモコウである。ワレモコウ(吾亦紅)は、日当りのいい草原に生えるバラ科の多年草だ。夏から秋にかけて、枝の先に特徴のある形の赤褐色の花をつける。花言葉は、「変化」「物思い」「明日への期待」「憧れ」などがあるらしい。何かちょっと個性的な植物だ。ゴマシジミは、ワレモコウが食草で、この花に止まっていることが多い。
 ワレモコウは、水気を好む植物だ。つまり、日当りのいい湿気のある草原がゴマシジミの生息地ということになる。暑いに決まっている。早くも、熱中症寸前である。冷たい水とお茶をリュックに入れている。早速、水を取り出し、飲みながら辺りを見回す。ワレモコウを見ていく。ゴマシジミは、シジミチョウとしては大型である。だから、発見しやすい。今日も、すぐに見つけることができた。羽化したてのようなカンピンである。黒が強い個体だったのは残念であるが、とにかく、今年も会うことができた。少し進むと、また見つけることができた。今度も、カンピンである。どうやら、時季はバッチリである。はじめのものよりは青い。個体数は少なくない。
 自分の目で確認してはいないが、この蝶は、面白い成長をするらしい。若齢の幼虫は、ワレモコウを食べて育つが、その後蟻に連れられて、蟻の巣穴に入る。すると、草食から肉食へと変わり、蟻の幼虫や蛹を食べて育つそうだ。面白い蝶だ。いつか、私も蟻の巣を掘って見てみたいと思う。クロシジミのときは、蟻の種類を調べずに調査に入ったので、非常に苦労してしまった。蟻を自分で探し当てることも面白かったが、あまりにも時間がかかりすぎた。腰痛持ちの私は、ゴマシジミの時は、蟻の種類等をしっかりと押さえてからにしたい。

 私のほか誰もいない草原で、のんびりと蝶たちを眺めることができ、仕事の疲れも癒えた。また明日から頑張れそうだ。

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