憧れだったアサギマダラ

アサギマダラ むしたち

 アサギマダラは、東北地方では珍しい蝶である。浅葱色とは、蓼藍で染めた明るい青緑色である。羽が青緑色に黒色、褐色の縁取り、何とも言えない艶やかさのある蝶である。

 中学生の頃、蝶仲間と3人で蔵王に行った。8月のことである。峩々温泉からかもしか温泉に続くルートを歩いた。実は、このルートはアサギマダラがいると「山と渓谷社」の本が紹介していたのだ。濁川という魚のいない渓流沿いの道で、歩いてみると意外と蝶は少なかった。みんな汗だくになりながら歩いた。突然、先頭の者がヒヨドリバナをネットで撫でた。「一丁上がり」と声が響いた。後ろにいた私たちは、何が起こったのかわからなかった。急いで駆けつけると、ネットの中にアサギマダラがいた。取り出したアサギマダラを見て、「図鑑よりはるかに綺麗だ」と思った。次は、自分が採りたいと思っていた。そして、何もじゃべらずに歩いた。すると今度は、スーッと浮き上がるように、高く飛び上がるアサギマダラを見た。青空をバックにしたその美しさは格別である。「あーっ」3人が同時に声を出し、空を見上げた。あのときの感動は忘れられない。今もはっきりと覚えている。私はこの蝶が大好きだ。
 仕事で長野に住んでいたときに、何度か、数え切れないほどのアサギマダラが、フジバカマやヒヨドリバナに群れる光景に出会ったことがある。見える限りのすべての花に、アサギマダラが止まっている感じである。1つの花群にいくつも止まっていることも普通である。不思議なのは、少しずつ個体数を増していくのではなく、突然湧き上がるのである。そして、いつの間にかいなくなる。
 アサギマダラは関東でも発生している。詳細な場所をはっきり記憶していないが、茨城か栃木の神社の裏山で、晩秋に幼虫をいくつも確認している。このとき、幼虫でも越冬すると確信した。また、4月下旬、白馬でヒメギフを観察中に、新鮮な個体を見たことがある。白馬で4月に新鮮な個体が見られるということは、発生場所はそう遠くではないのではないかと考えたが、未確認である。南国の蝶のイメージが強い蝶であるが、ベニモンカラスシジミの幼虫が雪のなかでも見られるように、案外この蝶の幼虫も寒さに強いのかもしれない。とにかく、不思議な蝶である。

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