もう30年くらい山菜採りが続いている。ここは、新潟県小千谷インターから程近い山の中である。5月の連休に3家族でこの地を訪れるというのが、年中行事になっている。10年くらい前までは、子供たちも付いて来たので賑やかだったが、最近は、子供たちは他に興味があるようで、親たちの行事となっている。
虫嫌いの女性たちも、春は小虫も少なく、花も綺麗、山菜は美味で、酒も美味いと人気?である。ヤマザクラ、コブシらの木が花を咲かせ、足元にはカタクリやイカリソウ、スミレなどの花が咲いている。田んぼにはオタマジャクシが群れている。雪渓を詰め、ウドを掘っている傍らをギフが飛んでいく。あたりには春特有の山の香りが漂っている。深呼吸をし、全身に春の息吹を取り込んでいく。大げさではあるが、体が元気
を取り戻していくのが分かる。雪渓、青空、芽を出したばかりのコゴミの黄緑、額を通してみれば、どこを切り取っても圧倒的な大自然の生命力を表現した絵画の大作である。すばらしい。
もともとは、蝶仲間のAさんと新潟や長野で蝶を追う傍ら、山菜を採り出したことがこの行事の始まりだった。そこに、友人のBさん家族を引き入れた。10年前に、Sさんは大病を患ったものの見事に生還した。そんな仲間たちと、ギフチョウを見ながら、かつてのように声を上げ喜び、山菜を採り、小鳥を見、ゆっくりとフィールドを楽しんでいる。
この地で、毎年みんなで立ち寄る農家がある。もう30年近くになる春だけのお付き合いである。これがいいのである。お会いするのが本当に楽しみだ。この季節、子供たちと山の入口でシートを敷いて、お昼を食べるのが常であった。地元の人たちの眼には、不思議な光景に写っていたようだ。ある時、一人のご主人が声をかけてくださった。こうして、お付き合いが始まりました。こうした出会いは最高である。2020年は残念ながら、自粛中のため行くことができず、LINEでの挨拶の交換となった。
この地区でも、流行りの「山菜採り禁止」という立て看板が立っている。山菜採りと農作業の時季が一致している。山道(地元の人にとっては農道)に、都会から来て車を我が物顔に止められるのは迷惑なのだ。それから、山菜を根こそぎとる採り方が嫌われている。センマイは茹でて干してを繰り返し、保存食として食べるため、1年分の量を採る。このようなゼンマイは別として、地元の人たちは、ほとんどの場合、その日食べる分の量だけを採る。このことを知らずに、見つけたすべてを採ってしまうと、地元からは当然嫌がられる。地元の採り方を覚えて、トラブルがないようにしたい。また、都会から来た人は、あいさつもしない人が多い。最近は、新潟ナンバーでもあいさつができない人も散見されるが・・・。
ところで、宿はずっと六日町の柾廣舘と決めている。毎年この時季だけここに来る。山から下りてきて、4時頃には風呂に入って、5時頃には食堂でビールを飲み始める。ここで出してくれる山菜料理は最高である。地酒の八海山は山菜とは相性抜群で、ついつい飲んでしまうが、不思議と二日酔いはない。南魚沼産コシヒカリは、美味しすぎてしこたま飲んだ後も、つい食べたくなる。大きな体で明るく迎えてくれる女将さんと、山菜採り名人のご主人には、いつも大変お世話になっている。女将さんが体調を崩し心配である。一日も早い回復をお祈りいたします。また、私たちを楽しませてほしい。