7月、この時季の乗鞍は、とても気持ちがいい。白骨温泉の近くで、オオイチモンジなどの観察をした後、昼窪から鈴蘭を抜け、スーパー林道に向かって、場所を移そうとしていた。
途中、鈴蘭平のスモモの木の周辺にオオミスジが見えた。何か気になり、近寄ってみた。何かに纏わりつくように何匹も飛んでいる。そして、枝先には3頭くらいが陣取っている。近づいてよく見ると、葉表に蛹があった。その様子は、渋谷の街に、アイドルが突然現れた時のようである。みんなが一目見たい、シャメを撮りたい、握手をしたいと群がっているそんな状態であった。この蛹はメスだと直感した。
北海道でも同じような光景を見たことがある。エゾシロチョウのオスが、メスの羽化を待っているのを見たことがである。あの時は、街路樹にエゾシロチョウの蛹がたくさんついていた。オスたちはすでに羽化しており、羽化していない蛹はメスのもののようだった。何匹ものオスがメスの誕生を今か今かと、蛹の周りで待っていた。蛹が割れ始めた。オスたちの動きが慌ただしくなった。メスはすぐに蛹から出て歩き始め、羽を伸ばす場所へ向かおうとするが、そんなことにはお構いなしで、すぐに大きいオスが交尾をしてしまった。
なぜ、産まれる前からメスだと分かるのだろう。不思議に思えるが、きっとフェロモンか何か介在しているものだろう。あるいは、人間の目には見えないが、虫たちにはメスだと区別できるように見えるのかもしれない。ともかく、不思議な虫の世界である。